▼過去の研究会・シンポジウム
2015年
2014年
2013年
2012年
 
2014年
 
 
2012年度第3回研究会「選挙と世論:アメリカ、韓国、日本」
2013年1月11日
 
 

2012年度学術行事:企画の趣旨

市場経済のグローバル化と欧州の経済危機は、現代民主主義の深刻なアポリアを炙り出すことになった。国民主権に基づく民主的な合意の形成や決定が、グローバルな市場や国際機関のような超国家的なパワーとその利害関心によって左右されるようになったからである。グローバル経済と国民主権に基づく民主的なガバナンスとの齟齬や対立は、地域的な偏差はありながらも、アジア地域にも同じく民主主義のアポリアを突きつけている。この点は、政権交代を成し遂げた日本の民主主義にも、民主化以後の韓国の民主主義にもあてはまる難問であり、民主主義の存在理由(レーゾン・デートル)すら問われていると言える。
選挙を通じた国民代表による民主的な統治システムの有効性が、市場のような、民主的なプロセスとは無関係の匿名のパワーによって決定されとすれば、民主的な選挙によって表明される国民意志すらも形骸化していかざるをえないはずである。それは、民主主義の正当性すらも揺るがしかねず、市民的公共圏を通じて形成される民主的なプロセスそのものに疑問符がつくことを意味している。この結果、韓国でも日本でも政治参加の制度的なチャンネルに対する信頼が揺らぎ、選挙における投票率は傾向的に低下し、いわゆる無党派層が有権者の半数近くを示す現象が定着しつつある。  しかし、若年層に著しい無党派層の拡大は直ちに、政治的な無関心やアパシーを意味しているわけではない。他方では、SNS(ソーシャル・ネットワーキン・システム)など、多様なメディアを駆使したソーシャル・ネットワークが様々な分野の生活世界に浸透・拡大し、ミクロな市民的公共圏の形成へとつながる動きがみられるからである。このような動きは、情報化によって加速化されるメディア空間の変容と密接にリンクしており、その実相に迫るためには、政治学、社会学、メディア研究、情報行動研究など、まさしく学際的なアプローチが必要とされている。
現代韓国研究センターでは、2013年度の学術行事計画として、大統領選挙を控えた韓国や解散・総選挙もありうる日本の政治変動の可能性をにらみつつ、両国における民主主義がメディア空間の変容とともにどのように変わろうとしているのか、その現状と展望を学際的な研究や交流、シンポジウムを通じて明らかにしていくことにしたい。
3回にわたる研究会の開催の後、国際シンポジウムを行い、本年度の学術行事の締めくくりとしたい。国際シンポジウムでは、自由民主主義と資本主義の関係や欧州の経済危機と民主主義の危機など、政治学・社会哲学的な知見に基づいてアクチュアルな批評活動を続けてきたクラウス・オフェ氏を基調講演者に迎え、上記のようなテーマをめぐる日韓の共通点や相違点などについて明らかにしていく予定である。

現代韓国研究センター長
姜 尚 中

日付場所

・日時:2013年1月11日(火)18:30~21:00
・場所:東京大学大学院情報学環 6階会議室

プログラム

・司会:木宮正史(東京大学現代韓国研究センター副センター長)
・報告:尹聖理(ユン・ソンイ;韓国慶煕大学)
「2012 Presidential Election & SNS in S. Korea」
・コメント:梁起豪 (ヤン・ギホ;韓国聖公会大学)
・報告:清原聖子(明治大学情報コミュニケーション学部)
「2012年アメリカ大統領選挙戦におけるメディア・インターネットの活用」
・コメント:久保文明(東京大学大学院法学政治学研究科)
・総合討論