▼過去の研究会・シンポジウム
2015年
2014年
2013年
2012年
 
2013年
 
 
第3回東アジア共同体フォーラム 「東アジア国際秩序の形成・展開・未来構想」
2013年9月28日
 
 
1. 東アジア共同体フォーラムとは

東アジア共同体フォーラムは、2011年に高麗大学アジア問題研究所が日中韓三国において東アジア研究の第一線で活躍する研究者に開催を呼びかけ、地域全体にかかわる対外政策を議論するための場としてスタートしました。その目的は、東アジアの政治、歴史、社会、経済にかかわる問題に分析を加え、互いの見解を交換することで、地域横断的な協力と共同体形成への展望を拡大し、研究者同士の緊密な協同・コラボレーションの網の目を創造し拡大していくことにあります。
2013年は朝鮮戦争終結60周年にあたるのみならず、2012年に日中韓三国それぞれで登場した新政権が、既存の地域秩序を乗り越えながら、二国間、および多国間にまたがる関係をいかに築いていくのか、大きな節目にあたる年です。
この文脈において、第3回東アジア共同体フォーラムは、現代の政治的変容に対して、歴史的、理論的、実証研究の成果を踏まえた光を当て、東アジアの多国間関係を左右する政治力学に改めて分析をくわえながら、新たな地域の協力枠組みへの展望を示すべく開催されます。

2. 第3回東京大会の開催趣旨

東アジア国際政治は、北京オリンピック開催と、その直後のGDPにおける「日中逆転」現象により、不安定化の時期を迎えています。さらに、韓国と日本が経済構造において近似することで、その経済政策をめぐる摩擦も激しさを増しているといえるでしょう。こうした中、2012年夏、日中韓の間には、領土問題が歴史問題と緊密にリンクする形で顕在化し、三国関係は首脳間交流や相手国イメージの面で深刻な状況を迎えつつあります。
現在の東アジア国際秩序の直接の歴史的起源は、1970年代における米中和解と日中和解による冷戦構造の変容、および、1990年代における民主化の進展とグローバルな冷戦の終結にあります。1970年代に米中・日中の和解を柱として作られた国家間の枠組みの上に、90年代においては、まず民主化とグローバルな冷戦の終結が国民相互間の接触・交流という新しい枠組みを生み出したと同時に、国家間関係でも韓国と旧共産圏との正常化が行われたことで、現代の東アジア国際秩序が生み出されたということができるでしょう。
しかし、こうした過去の分岐点を曲がった先の現代において、我々が直面している問題は依然として深刻です。朝鮮半島における冷戦体制ともいうべき南北分断体制は依然として持続しておりますし、北朝鮮の国家的存続の手段として選択された核とミサイル問題は、地域の安定を脅かし続けています。また、未解決なままの領土問題は、歴史問題と結合することで、今までにない緊張を生み出しています。
今こそ、かつて作られた国際秩序を歴史的に検証することで、埋もれてしまった可能性を再発掘すると同時に、現在の複雑な情勢を読み解きつつ、知的なインスピレーションを研ぎ澄ますことが必要な時代はないのではないでしょうか。過去を振り返ることにより、新たな国際秩序を支えるための基本概念について、深く討論すべき時が来ていると考えます。過去の東アジア地域の分岐点において、いかなる論理の衝突や政治的考慮の上に、現在の枠組みが築かれたのか、そして、いかなる問題が、なぜ、積み残されたのか、歴史的な事実を相互検証しつつ、現在の我々が陥ってしまっている状況を、認識することがまず必要でしょう。さらに、それを解きほぐし新たな安定を作り出すための処方箋を、現代の国際政治状況の中で、基本的概念や分析視角をさらに鍛え直し洗練させながら具体的な政策として考えていくことも必要と考えます。
シンポジウムにおいては、第一第二セッションにおいて、現代の直接の起源としての70年代と90年代に焦点を当てると同時に、第三セッションにおいて現代の問題として歴史と絡まった領土問題の位相を取り上げ、共通の認識形成を目指します。その上で、最後はラウンドテーブルにて、現実的な処方箋についても踏み込んで議論をしていきます。
国家間関係の緊張している今こそ、研究者は、国益の代弁者となって議論をするのではなしに、互いの国益を尊重しつつも、東アジア地域全体の利益や長期的な視点に立って、現在の国民感情相互の対立や、短期的国益の摩擦を回避するための、現実的な処方箋を、経済社会文化的な見地も交えて探っていく必要があると考えます。

日時場所

・日時:2013年9月28日(土) 09:50~18:30
・会場:東京大学駒場キャンパスⅠ 18号館ホール【地図

プログラム

■09:20-09:50 開場

■09:50-10:00 開会
開会挨拶 木宮正史 (東京大学現代韓国研究センター長)
劉江永 (清華大学国際問題研究所副所長)
金学俊 (東北亜歴史財団理事長)

■10:00-12:00 第1セッション
<1970年代の東アジア国際政治構造の形成>
司会 李来栄 (高麗大学教授)
報告
1 井上正也 (香川大学准教授)
「日中国交正常化と台湾問題、1971〜1972」
2 李東俊 (高麗大学アジア問題研究所研究教授)
「1970年代初期の朝鮮半島をめぐる米中共同管理の変容」
3 黄大慧 (中国人民大学教授)
「尖閣諸島の主権をめぐる紛争で日中は棚上げに同意したのか」
討論 西野純也 (慶応義塾大学准教授)
李元徳 (国民大学教授)
朱建榮 (東洋学園大学教授)

■12:00-13:00 昼食休憩

■13:00-15:00 第2セッション
<ポスト冷戦期における国際秩序の変容と和解-1990年代の民主化とナショナリズムの時代>
司会 木宮正史 (東京大学教授)
報告
1 浅野豊美 (中京大学教授)
「歴史問題清算の失われた可能性-村山談話と平和友好交流計画・アジア女性基金」
2 申旭熙 (ソウル大学教授)
「第2イメージの再考:東北アジアにおける単位の複合性」
3 張歴歴 (中国外交学院教授)
「東北アジア諸国の島をめぐる紛争と変わりゆく国際・地域秩序」
討論 磯崎典世 (学習院大学教授)
孫基榮 (高麗大学アジア問題研究所HK教授)
劉江永 (清華大学教授)

■15:00-15:10 休憩

■15:10-17:10 第3セッション
<激しい国家間対立の位相と和解の可能性-東アジア国際政治の現在>
司会 李鍾元 (早稲田大学教授)
報告
1 毛里和子 (早稲田大学名誉教授)
「東北アジア:領土をめぐる紛争と歴史認識」
2 車在福 (東北亜歴史財団研究委員)
「中国と日本の歴史・領土紛争の激化:日本政治の右傾化と憲法9条の改正」
3 楊伯江 (中国社会科学院教授)
「東アジアにおける地域的和解:歴史とどう共存するか」
討論 高原明生 (東京大学教授)
李明賛 (東北亜歴史財団研究委員)
劉傑 (早稲田大学教授)

■17:10-18:30 総合討論
司会  李鍾元 (早稲田大学教授)
討論  木宮正史 (東京大学)
浅野豊美 (JSPS基盤研究 東アジア地域史形成プロジェクト代表)
李正男 (高麗大学アジア問題研究所HK教授)
金学俊 (東北亜歴史財団)
劉江永 (清華大学)
劉傑 (早稲田大学)

参加方法:申込不要・無料
お問い合わせ先
東京大学大学院情報学環現代韓国研究センター
こちらのフォームからお問い合わせください。